ナのポケットの中の小さな鈴

野原へと続く道の果てに、年老いたスターフルーツの木の木陰にひっそりとたたずむ、青い瓦屋根の家がありました。その家で、ナは母親と祖父と一緒に暮らしていました。ナは活発な女の子で、目が輝き、想像力も豊かでした。テーブルを拭く布を遠い王国の旗に見立てたり、スツールを丘を駆け抜ける馬に見立てたりすることができました。けれども、母親と祖父を時々悲しませる癖もありました。いつもとても早口で、何でも急いでやり、人の話を最後まで聞こうとしないのです。

毎朝、祖父は朝の光が窓辺に差し込むころ、ナを起こしました。大きな声で呼ぶことはせず、カーテンを開けてから、「ナ、新しい一日が始まったよ」と言うのでした。ナはいつも飛び起きてランドセルを探しに走り、歯を磨きながら自分の予定を母親に話しました。ある日には牛乳のコップを倒してしまいましたが、母親の注意を最後まで聞く前に、庭へ駆け出してしまいました。またある日、祖父が花をつけ始めたスターフルーツの木の話をしようとすると、ナは新しく作った凧の話を割り込ませました。ナは誰かを悲しませようとしていたわけではありません。ただ、自分の頭の中にあることはいつでも大切で、すぐに話さなければならないと思っていたのです。

ある週末の午後、小さな市場を通り過ぎたあと、ナはシダレガジュマルの木の根元で、きらりと光るものを見つけました。それは、竜眼の実より少し大きいだけの、とても小さな銅の鈴でした。鈴には、擦り切れた茶色のひもが結びつけられていました。ナはそれを拾い、ほこりを拭いてから耳元に近づけました。ところが不思議なことに、鈴は少しも音を立てませんでした。

「壊れているのかもしれないね」と、ナは言いました。

そのとき、隣で花を売っていたおばあさんが、にっこり笑いました。おばあさんの声は、葉と葉が触れ合う音のようにやさしいものでした。

「その鈴は壊れていないよ。持っている人が心から思っていることを話したときにだけ、鳴るのさ」

ナは興味深そうに尋ねました。「心から思っていることって、何ですか?」

「自分が本当に考えていることや、本当に感じていることだよ。ほめてもらうためや、叱られないためだけに言うことではないの」

ナは鈴を持ち上げ、試しに言いました。「わたしは緑豆のお菓子が大好きです」

鈴は、やはり黙ったままでした。

ナは少し考えてから、小さな声で言いました。「今日はお母さんがお菓子を買ってくれなくて、ちょっと悲しいです」

チリン。

澄んだ音が響きました。小さな音でしたが、あまりにも清らかで、ナにはその音が透明な一滴の水に触れたように感じられました。花売りのおばあさんはうなずき、ナが本当にその鈴を必要としている人に出会うまで、持っていてもよいと言いました。ただし、一つだけ言いつけました。鈴は、他の人が本当のことを言っているか、うそをついているかを確かめるためのものではないこと。鈴は、持っている人が心の中に隠していることに気づく手助けをするだけなのだ、と。

食事の席で響いた最初の音

ナは鈴を家に持ち帰り、ポケットの中に隠しました。夕食のとき、母親がナに魚を一切れ取り分けました。ナは野菜が嫌いだと言おうとしましたが、ふとおばあさんの言葉を思い出しました。ポケットの中の鈴に手を触れてから、こう言いました。

「お母さん、わたしは苦い野菜が好きじゃないけど、お母さんが長い時間かけて洗って料理してくれたのはわかっています。少し食べてみます」

チリン。

母親は少し驚いたようにナを見ました。いつもよりいい子だと言うことも、野菜を全部食べるよう無理強いすることもありませんでした。ただ微笑んで、小さな一口分をナの皿に取り分けました。

鈴の音を聞いた祖父が、すぐに尋ねました。「そのポケットには何が入っているんだい?」

ナは花売りのおばあさんに出会ったことを、最初から最後まで話しました。祖父は口を挟まず、最後まで耳を傾けました。ナが話し終えると、祖父は鈴にそっと触れて尋ねました。

「それでは、今日いちばん大切な本心は何だと思う?」

ナは茶碗を見下ろしました。鈴が気に入ったと言おうとしましたが、心の中には別のことがあると気づきました。

「わたし、ときどき話しすぎて、おじいちゃんやお母さんの話を聞いていないことがあります。でも、どうやって直せばいいのかわかりません」

チリン。

今度は、鈴の音がいつもより長く響きました。母親はナの肩に手を置きました。祖父は、習慣を直すことは壁に釘を打つのとは違い、一度やれば終わりというものではないと言いました。それは、新しい道を歩く練習のようなものです。思い出してはやり直すたびに、ナは一歩ずつ前に進んでいくのです。

ナが一つの話を待つことを学んだ日

翌日、ナは鈴をポケットに入れたまま学校へ行きました。休み時間になると、ティーが走ってきて、フェンスを越えて飛ぶ紙飛行機を自慢しました。ティーが話し始めたとたん、ナは不思議な鈴の話をしようとしました。けれど、友だちの顔に浮かんだわくわくした表情を見て、立ち止まりました。

「続きを聞かせて」と、ナは言いました。「飛行機はどうやって飛ぶの?」

ティーは、紙飛行機がもっと長く滑空する方法を見つけるまで、何度も折り直したのだと話しました。ナは話に割り込まず、なぜその紙を選んだのか、翼の部分をどう折ったのか、どこで試したのかを尋ねました。聞けば聞くほど、ナは友だちの話がおもしろく感じられました。ティーが話し終えると、ナが何も言っていないのに、ポケットの中の鈴がかすかに鳴りました。

ナは驚きました。通りかかった先生にそのことを話すと、先生は、誰かの話に心から耳を傾けることも、誠実な気持ちを表しているのだと説明してくれました。心の中の真実は、いつも言葉にしなければならないわけではありません。相手をじっと見つめるまなざしの中にあったり、相手が話し終えるのを待つことの中にあったり、ちょうどよいときのうなずきの中にあったりするのです。

ナは、それまで見過ごしていたことに目を向け始めました。ティーは飛行機を自慢したいだけではなく、自分の努力を誰かに認めてもらいたいのだと気づきました。友だちのリンが休み時間にいつも黙っているのは、友だちを作りたくないからではなく、遠くへ働きに行った母親を恋しく思っているからだと気づきました。祖父がスターフルーツの木の話を何度も繰り返すのも、忘れてしまったからではなく、最初の花のつぼみを見つけた喜びを誰かと分かち合いたいからなのだと気づきました。

鈴と忘れられていた謝罪

数日後、ナとティーは学校の裏庭の小川に流すため、紙の船を一緒に作っていました。ナは色紙を持ってきて、ティーは帆柱にする竹の棒を用意しました。船が完成に近づいたとき、ナはうっかり絵の具箱を落としてしまい、ティーの帆の部分に青い筋を長くつけてしまいました。ティーは眉をひそめました。

「壊しちゃったじゃないか」

ナは顔が熱くなるのを感じました。絵の具箱を机の端に置いたのはティーだからだと言おうとしましたが、その言葉が口から出る前に、ポケットの中の鈴がかすかに震えました。急いで机のそばを通った自分にも責任があると、ナはわかっていました。

「ごめんね。よく見ていなかった。もしよかったら、一緒に帆を作り直すよ」

チリン。

ティーはまだ悲しそうでしたが、背を向けようとはしませんでした。二人は別の紙を一枚取り出しました。今度はナが絵の具箱を机の端から十分離れたところに置き、もっとゆっくり作業しました。船が完成すると、新しい帆に残った青い筋は、まるで小さな雲のように見えました。ティーはしばらく眺めてから、その青い色を残してもいいと言いました。二人の船は他の船とは違いましたが、特別な目印を持つ船になったのです。

ナは、謝ることは何もかもをすぐに消してしまうための言葉ではないと理解しました。謝罪は、起きてしまったことを二人で直す方法を探すための、最初の扉にすぎません。その後の行動がなければ、謝罪の言葉は葉のように軽く、風に吹かれて飛んでいってしまうのです。

ナが鈴に伝えたかったこと

土曜日の午後、ナは花売りのおばあさんを探すため、再び市場へ行きました。でも、あのシダレガジュマルの木のそばには、もう花の店はありませんでした。近くの店の人たちに尋ねても、おばあさんがどこへ行ったのか知っている人はいませんでした。ナは悲しそうに石段に腰を下ろしました。ポケットの中の鈴は、黙ったままでした。

ナは鈴を取り出し、手のひらに乗せて言いました。

「いつかまた、聞くことを忘れてしまうのが怖いです。前みたいにせっかちになって、大切な人たちを悲しませるのが怖いです。でも、すぐにうまくできなくても、これからも頑張り続けたいです」

チリン。

音はやさしく響きました。ナはふと、おばあさんが魔法の道具を渡して、何もかもを簡単にしてくれたわけではないのだと理解しました。おばあさんが渡してくれたのは、立ち止まる方法だったのです。鈴が鳴るたびに、ナは、一つの言葉の後ろにはいつも感情があること、一つの過ちの後ろにはいつもやり直す機会があること、そして人の沈黙の後ろには、聞いてもらうのを待っている話があるかもしれないことを思い出すのでした。

家に帰ると、ナは祖父がスターフルーツの木の下で、丁寧にハンモックを結び直しているのを見つけました。祖父が咲き始めた新しい花の話をしようとしたとき、ナはその隣に座りました。

「おじいちゃん、話して。最初から聞きたいです」

祖父は微笑みました。そして、スターフルーツの木のこと、去年の雨季のこと、その木を初めて小さな植木鉢に植えたときのことを話しました。ナは静かに座り、話に割り込みませんでした。祖父が話し終えてから、ナは尋ねました。どうしてそんなにスターフルーツの木が好きなのか、と。

「ゆっくり育つからだよ」と、祖父は答えました。「時間がたたないと、結果を見せてくれないものもあるのだと教えてくれるんだ」

ナのポケットの中で、小さな鈴が澄んだ音を一つ鳴らしました。家の軒先に立っていた母親にも、その音が聞こえました。母親は鈴が何を言ったのか尋ねませんでした。ただ娘を見つめて、微笑みました。

それからというもの、ナは相変わらず早口で話してしまうこともあり、聞くことを忘れたり、うっかり急いで物事をしたりすることもありました。でも、そんな自分に気づくたび、ポケットに手を当て、ゆっくりと息を吸ってから、相手に尋ねるのでした。「続きを聞かせてくれる?」

鈴は、初めのころほど頻繁には鳴らなくなりました。きっとナが、もう鈴がなくても大切な音を聞き始めていたからでしょう。それは、一日の終わりに母親がつくため息の音、紙の船が思いどおりの方向へ流れたときのティーの笑い声、風に揺れるスターフルーツの葉の音、そして自分が正しいことをしたときに聞こえる、心の音でした。

そしてナは、本心を口にできる人は尊いけれど、他の人の本心に耳を傾けられる人は、皆がもっと互いに近づくための新しい扉を開いているのだと理解しました。