白雲村のはずれに、丘へと続く曲がりくねった道のそばに小さな庭がありました。庭は広くありません。入り口から庭の真ん中にある石の井戸まで、ひとりの人がゆっくり歩いて行けるくらいの広さです。それでも、そこはいつも色鮮やかでした。春には、垣根のそばで菊の花が黄色く咲きます。夏には、ミントの茂みが爽やかな香りを漂わせます。秋になると、井戸の前の柿の木がたわわに実をつけます。冬になっても、いくつかの小さな花の茂みは、消えることを拒む小さな星のように、懸命に花を咲かせ続けます。
庭の世話をしているのは、ナという女の子でした。ナは丘のふもとの瓦屋根の家で、祖母と一緒に暮らしています。毎朝、学校へ行く前に、緑色のじょうろを持って庭へ出ます。草を抜き、枯れ葉を拾い、風で傾いた枝を立て直し、花壇一つ一つに話しかけます。ナは、植物も耳を傾けていると信じていました。ただ、植物は自分たち独自の方法で返事をするのです。
「菊さん、おはよう。今日は早く学校へ行かなくちゃいけないから、続きのお話は帰ってきてからね」
ナはいつも、そんなふうにささやいていました。
それを聞くと、祖母は微笑みました。祖母は、植物は話せないのだとナに言ったことが一度もありません。愛することを知っている人にしか気づけないことがあると、祖母は知っていたのです。
黄色い傘
ある日の午後、学校から帰る途中、ナはイチジクの木の根元に古い傘が落ちているのを見つけました。傘は淡い黄色で、布の表面には雨粒のような小さな丸い模様が描かれていました。傘の骨が一本曲がり、柄には傷がついていましたが、ナが持ち上げると、傘は突然、手の中でかすかに震えました。
ナはあたりを見回しました。道には誰もおらず、風に吹かれて枯れ葉がいくつか転がっているだけでした。
「きっと誰かが落としていったんだね」とナは言いました。「持って帰ろう。持ち主が見つかるかもしれないもの」
ナがそう言い終えるやいなや、傘がふわりと開きました。澄んだ声が、ナには枝の上の鳥の声かと思うほど小さく響きました。
「持ち主が見つからなかったら、どうするの?」
ナは驚いて、傘を落としそうになりました。
「今、あなたが話したの?」
「うん。でも怖がらないで。私は、あまりにも長いあいだ雨の下に立っていたから、空や大地のあらゆる音に耳を傾ける方法を覚えた、ただの傘だよ」
ナは傘を注意深く見つめました。話す傘に出会ったのは初めてでしたが、その声は優しく、少し寂しそうでした。
「私と一緒に家へ帰りたい?」とナは尋ねました。
「誰かを守る傘になりたい」と傘は答えました。「それが傘のするべきことだから」
ナは傘を家へ持ち帰りました。祖母は、曲がった骨をまっすぐに直し、破れたところに小さな布を縫いつけ、それから柄をきれいに拭いてくれました。その日から、黄色い傘はナの仲間になりました。晴れた朝には、戸口のそばでじっとしています。雨が降ると、ナの頭上で開き、冷たい雨粒からナを守ってくれました。
やまない雨
その年、白雲村では長い日照りが続きました。地面には細いひび割れが走りました。丘のふもとの小川には、澄みきった水たまりがいくつか残るばかりでした。庭も枯れ始めました。菊の花は花びらを閉じ、ミントはもう香りを漂わせず、井戸の前の柿の木は、太陽の下で黙り込んだように立っていました。
ナは毎日水を運んで庭にまきましたが、小さなじょうろでは庭全体を潤すことができません。心配のあまり、夜眠っていても、枯れ葉が庭いっぱいに舞う夢を見るほどでした。
「悲しまないで」と黄色い傘が慰めました。「そのうち雨が降るよ」
「でも、雨が降るのが遅すぎたらどうするの?」とナは尋ねました。「庭がそれまで待てないかもしれないのが怖いの」
傘は答えませんでした。ただ、布の表面にある丸い模様をかすかに震わせ、何かを考えているようでした。
それからちょうど三日後、空が突然真っ暗になりました。山の方から黒い雲が押し寄せ、風が強く吹いて木の枝を大きく揺らしました。そして雨が激しく降り始めました。最初、ナは喜んで軒下へ走り出ました。しかし、しばらくすると、これは普通の雨ではないことに気づきました。丘の斜面から泥や枯れ枝、小さな石を巻き込みながら、水が勢いよく流れ下りてきたのです。水の流れはまっすぐ庭へ向かっていました。
ナは急いで黄色い傘を持ち、丘へ走りました。木の門を閉めようとしましたが、水はもう足首まで達していました。花壇は水につかり、柿の木の根元の土は深い溝のようにえぐられていました。このまま水が流れ続ければ、庭全体が丘のふもとまで押し流されてしまうかもしれません。
「どうしたらいいの?」ナは叫びました。
「みんなを呼んで」と傘が言いました。「ひとりでは庭を守れないよ」
ナは村の方へ走りました。家々の戸を一軒ずつたたき、子どもたちや近所の人たちに声をかけました。ある人は鍬を持ち、ある人は土のうを持ち、またある人は古い板を運んできました。みんなで丘へ上り、流れを空き地の草原へ向かわせるために、垣根に沿って排水溝を掘りました。子どもたちは石を拾って列に並べ、大人たちは土のうで水が激しくあふれている場所をせき止めました。
黄色い傘は、ナを守るだけではありませんでした。こちら側へ傾いて、縄を運んでいる小さな子を雨から守り、あちら側へ傾いて、垣根を結び直しているおばあさんを雨からかばいました。誰かが足を滑らせそうになるたび、傘はその人の目の前でふわりと開き、その人が泥水たまりに気づいて、よりしっかり立てるようにしました。
午後いっぱい、みんなは雨の中で働き続けました。ナは何度も仲間たちを励ましました。
「がんばって! もう少しだよ。ほら、水の流れが変わってきた!」
空が薄暗くなり始めるころ、新しく掘った溝に水が流れ始めました。水は庭を回り込み、草原へ流れ落ちていきました。花壇はすっかり水にぬれ、傾いた木もいくつかありましたが、庭は守られました。
傘が望んだもの
翌朝、雨はやみました。太陽が雲の後ろから顔を出し、葉の上にきらめく光の筋を落としました。村の人たちは庭に戻り、木を立て直し、土を寄せ、折れた枝を拾いました。井戸の前の柿の木がまだしっかり立っているのを見て、みんな驚きました。低い枝の一つでは、赤い花のつぼみが開きかけていました。
ナは黄色い傘を持ち上げ、傘の骨が一本すっかり折れていることに気づきました。布にも、さらに長い裂け目ができていました。
「あなたはみんなをたくさん助けてくれたね」とナは言いました。「もっときれいに直してあげるね」
傘はしばらく黙ってから答えました。
「これ以上きれいにならなくてもいいよ。明日、誰を守れるのか、それだけ知りたいんだ」
ナは傘を胸に抱きしめました。小さな友だちは、きれいな箱の中にしまわれたり、みんなに褒められたりすることを望んでいるのではないのだと、ナにはわかりました。傘が望んでいるのは、ただ役に立つことを続けることでした。
それから、ナと祖母は庭の入り口に大きなフックを取りつけました。雨が降ったときには、訪れた人なら誰でも黄色い傘を借りられるようにしたのです。ある日は、傘は郵便配達員を雨から守りました。ある日は、迷子になった子猫と一緒に歩きました。ある日は、母親に薬を届ける男の子の肩にかかっていました。戻ってくるたびに、傘は必要な人を待てるよう、戸口のそばにきちんと置かれました。
雨の後、庭の草木は以前よりも青々と茂りました。村の人たちも一緒に、その場所の世話をするようになりました。彼らは小さな排水溝をさらに掘り、土を支える木を植え、のどが渇いた人が使えるよう、垣根のそばに水桶を置きました。ナはもう、庭のことをひとりで心配する必要はありませんでした。ひとつの場所が強く保たれるのは、ひとりの人がすべてをするからではなく、多くの人が自分の小さな力を進んで分け合うからなのだと、ナは気づきました。
数か月後、井戸の前の柿の木に、これまででいちばん大きな花が一輪咲きました。花びらは鮮やかな赤色で、花の中心はつややかな黄色。やさしい香りが風に乗って広がりました。ナはその花を黄色い傘に贈るため、傘の柄に小さなリボンを結びました。
「庭からのありがとうの贈り物だよ」とナは言いました。
傘は陽の光の中で、かすかに揺れました。ほかの誰にも聞こえませんでしたが、ナには友だちのささやきが聞こえました。
「帰る場所をくれて、ありがとう」
ナは微笑みました。庭は、花が育つ場所であるだけではないと、ナにはわかっていました。そこは、優しさが分け与えられる場所であり、古い傘が頼りになる友だちになれる場所であり、小さな行動が、ほかの人たちの手を呼び寄せて力を合わせる場所でもあるのです。
それ以来、雨が降るたびに、白雲村の人たちは、誰ひとりとして他人を助けるには小さすぎる存在ではないのだと思い出しました。傘はひとりの人を雨から守ることができます。でも、正しいときに開けば、地域全体に、もっと近くに寄り添って立ち合おうと呼びかけることもできるのです。


同じカテゴリーの記事
道を見つけて帰る葉っぱ
待つことを知る種
風鈴のために笑い声を集める少年
太陽のために服を縫う少女
庭のために雨粒を守った少年
夏を呼び戻す風鈴
同じジャンルの記事
タム・カム 第二部:後宮をさまよう怨霊
タムとカム: 後宮の争いと原典版の結末 – パート1
タムカム
ココナッツスカル
サン・ギョン
白菊の伝説