ススキの野原に囲まれた村のはずれに、一年中ブーゲンビリアの花が咲き誇る、赤い屋根の家がありました。その家で、少女のメイは祖母と暮らしていました。メイは柔らかな黒髪と輝く瞳を持ち、そしてとても特別な習慣がありました。美しいものを見ると、何かを約束したくなるのです。
雨のあと、庭先の若木が傾いているのを見ると、メイは言いました。明日、この木を起こしてあげるね。軒先で祖母が野菜の束を並べているのを見ると、こう言いました。今日の午後は、おばあちゃんのお手伝いをするね。小さな友だちのリス坊やが毛糸のマフラーを落としたときにも、メイは約束しました。ぼくがマフラーを見つけてあげるよ。
メイは心からの気持ちで約束を口にしていました。けれども、蝶を追いかけるのに夢中になる日もあれば、鳥のさえずりを聞いているうちに食事の時間さえ忘れてしまう日もありました。そのため、いくつかの約束は、終わっていないことの中に置き去りになっていました。
古木の下の風鈴
夏の終わりのある夕方、祖母は薬草を摘むため、メイを村の裏手にある小さな森へ連れていきました。大きなガジュマルの古木のそばを通りかかったとき、メイはかすかな、りんりんという音を聞きました。その音は、村のはずれの教会の鐘の音とも、ヤギの首にかかった銀の鈴の音とも違っていました。磁器の器に水滴が落ちたように、澄んだ音でした。
メイが周りを見回すと、低い枝に小さな風鈴が吊るされていました。風鈴は細い竹筒で作られ、その下には葉の形をした木片がついていました。森にはほとんど風がないというのに、風鈴はかすかに揺れていました。
祖母はそれを見て微笑みました。
「昔、村の人たちは、この風鈴は誰かが心からの約束を口にしたときだけ鳴る、と話していたんだよ」と、祖母は言いました。「でも、約束があまりにも長く忘れられると、黙ってしまうんだよ」
メイは興味津々で近づきました。葉の形をした木片に手を触れ、これからはどんな約束も決して忘れないと約束しました。
するとすぐに、風鈴が澄みきった音を一つ響かせました。その音は木々の梢を抜け、草むらの中へ入り込み、種を探していた鳥たちまで顔を上げて聞き入らせました。
メイは喜んで村へ走って帰りました。そしてリス坊やに風鈴のことを話しました。好奇心旺盛なリス坊やは、風鈴が自分のすべての約束を思い出させてくれるのかと尋ねました。メイは力いっぱい頷きました。
「風鈴の音を聞けば、ぼくは思い出せるよ」と、メイは言いました。
小さな約束
翌朝、メイはいつもより早く起きました。庭先の若木を起こし、根元に土を寄せてから、ひしゃく一杯の水をやりました。若木の幹を竹の支柱に結びつけたそのとき、森のほうから優しいりんりんという音が聞こえてきました。
メイは微笑みました。風鈴が自分を褒めてくれているのだと思ったのです。
昼になると、メイは祖母の野菜を摘み、薬草を洗い、家の軒先をきれいに掃きました。風鈴がまた鳴りました。午後には、リス坊やと一緒に落とした毛糸のマフラーを探しに行きました。二人は地面に残った小さな足跡をたどり、とうとう小川のそばのシダの茂みに引っかかっているマフラーを見つけました。
リス坊やはマフラーを抱きしめ、うれしさのあまりメイの周りをぐるぐる飛び跳ねました。森のほうから、風鈴の音がまた響きました。
三つの約束を続けて守ることができたメイは、自分がとても信頼できる人になったような気がしました。そこで、村の人みんなの手伝いを引き受け始めました。木工職人のおじさんのために果物を摘むと約束し、菓子を売るおばさんの代わりに鶏の世話をすると約束し、漁師のおじさんの家まで魚かごを運ぶと約束し、友だちと一緒に用水路に小さな橋を架けると約束しました。
その約束はあまりにも速く次々と重なったので、メイは自分がいくつの仕事をできるのか考える暇もありませんでした。ただ、風鈴に鳴り続けてほしかったのです。
初日は、メイはまだすべての仕事を終わらせようと頑張りました。二日目には、疲れを感じ始めました。そして三日目、朝から晩まで雨が降りました。メイは野原へ果物を摘みに行くことも、菓子を売るおばさんの家へ行くことも、友だちと橋を架けることもできませんでした。
その夜、小さな部屋で、メイは瓦屋根を打つ雨音を聞きながら横になっていました。まだ果たせていない約束を思い出させるために、風鈴が鳴るのを待ちました。しかし、森は静まり返っていました。雨の向こうから、澄んだ音が聞こえてくることはありませんでした。
メイの心はずしりと重くなりました。
風鈴が黙ったとき
翌朝、メイはガジュマルの古木のもとへ走っていきました。風鈴は枝に吊るされたままでしたが、竹筒はじっと動かずにいました。メイが枝をそっと揺らすと、風鈴は乾いた音を一つ立てただけで、またすぐに黙り込んでしまいました。
「どうして思い出させてくれないの?」と、メイは尋ねました。
答えるものは誰もいませんでした。ただ、葉に残っていた雨のしずくが、いくつかメイの肩に落ちてきただけでした。
メイは祖母に見つかるまで、ガジュマルの木の下に座っていました。村の人たちとの約束から、風鈴が鳴らなくなったことまで、すべてを話しました。
祖母は叱りませんでした。ただメイの隣に腰を下ろし、ゆっくりと言いました。
「約束は、誰かに聞かせるための風鈴の音ではないんだよ。誰にも思い出させてもらえなくても、自分が言ったことを覚えていること、それが約束なんだ。でも、一度にすべてのことをできる人はいないということも、わかっておかなくてはいけない。約束する前に、自分に十分な時間と力と忍耐があるかどうか、よく考えるんだよ」
メイはうつむきました。そのとき初めて、風鈴に褒められる感覚が好きだったというだけで、たくさんの約束をしてしまったのだと気づきました。誰かを悲しませようとしたわけではありません。それでも、考えなしに口にした言葉は、相手を待たせてしまうことがあるのです。
「それでは、今、私は何をすればいいの?」と、メイは尋ねました。
「まず、本当のことを話すんだよ」と、祖母は答えました。「それから、一番大切なことから取りかかりなさい。もし守れない約束があるなら、謝って、その人と一緒に別の方法を探すんだよ」
用水路のそばでの謝罪
メイは村へ戻りました。最初にしたことは、菓子を売るおばさんに会いに行くことでした。メイは、鶏の世話をすると約束したのに、雨の日には行けなかったことを話しました。そして、おばさんを一人でやりくりさせてしまったことを謝りました。
菓子を売るおばさんはメイを見て、優しく言いました。
「待たなくてはいけなかったから悲しかったけれど、本当のことを話してくれてうれしいよ。次から、雨が降りそうだったり、別の用事があったりするなら、早めに知らせてくれればいいんだよ」
そのあと、メイは木工職人のおじさんの家へ行きました。熟した果物はもう誰かが代わりに運んでくれたので、おじさんはメイに果物を摘んでもらう必要はありませんでした。メイは、できなかった仕事の代わりに木工所を掃除させてほしいと頼みました。おじさんは了承し、二人は軒先に乱雑に置かれていた木材を一緒に整理しました。
最後に、メイは用水路のそばで友だちに会いました。小さな橋はまだ架かっていませんでした。メイはすぐに完成させると約束する代わりに、翌朝なら力を貸せると伝えました。友だちは仕事を分担しました。竹を探す人、ひもを用意する人、岸辺の泥を片づける人。誰も一人でやらなくてすみました。
翌日、橋は完成しました。大きくはなく、一人が渡るのにちょうどよい大きさでしたが、とても丈夫でした。メイが最初の板に足を乗せたとき、森のほうから風鈴の音が響きました。今度の音は長くにぎやかに鳴り続けるものではありませんでした。優しく三度鳴っただけでした。それは、大切なのは約束の数ではなく、一つひとつの行いに込められた誠実さなのだという、ひと言のような音でした。
メイの学んだこと
それ以来、メイは約束の仕方を変えました。頼まれごとを引き受ける前に、少し立ち止まり、いつも自分に問いかけるようになりました。この仕事は本当に私の助けが必要なのか。いつならできるのか。困ったとき、ほかの人に間に合うように知らせられるだろうか、と。
それでも、メイが忘れてしまうことはありました。謝らなければならないこともありました。でも、もう自分の言葉から逃げることはありませんでした。途中で放り出した仕事をやり直したり、手伝ってくれる人を探したり、まだできないことをはっきり伝えたりと、小さな行動で埋め合わせる方法を学んだのです。
リス坊やもメイにならいました。二人は木でできた板を一枚作り、家の戸口のそばに置きました。覚えておく必要のあることがあるたびに、板に小さな絵を描きました。葉っぱは木の世話をする仕事、水滴は祖母を手伝う仕事、橋は友だちとの約束を表しました。その絵は、約束にはいつも具体的な行動が結びついているのだと、メイに思い出させてくれました。
何年もあと、メイが大人になってからも、ガジュマルの古木の下の風鈴はそこにありました。村の子どもたちはよく、風鈴の話を聞きにやって来ました。ある子が、どうして風鈴にはどの約束が心からのものかわかるのかと尋ねることもありました。メイはただ微笑み、風鈴は誰かの考えを読み取れるわけではないのだと答えました。風鈴は、人が自分自身の声に耳を澄ませるのを助けてくれるだけなのです。
そしてメイは、子どもたちにこう言い聞かせました。「ほんの一瞬、相手を喜ばせたいからといって、約束をしてはいけないよ。約束したなら、実行できるように頑張りなさい。できないときは、本当のことを話して、埋め合わせる方法を探すんだ。心からの謝罪も、行動で証明しなくてはいけないよ」
風がススキの野原を吹き抜けました。ガジュマルの古木の下の風鈴が、澄んだ、温かな音を響かせました。その音は村のほうへ飛んでいきました。そこでは、一人ひとりの手と足と心によって、小さな約束が大切に守られていました。


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