ふわふわウサギと約束を守る雨粒

ふわふわウサギと約束を守る雨粒

緑豊かな森のそば、若い草が透き通った小川のほとりに生えている場所に、ボンという名の小さなウサギがいました。ボンは長い耳と柔らかな白い毛、そしてとても速く走れる足を持っていました。大きな古木の根元から低い丘の向こうにある花畑まで、いろいろな場所を探検するのが大好きでした。

ボンはとても親切なウサギでもありました。助けを必要としている友だちがいると、いつもすぐに駆けつけました。ハリネズミの子がイチゴを落としたときは、一つ一つ拾うのを手伝いました。黄色いアヒルが池への帰り道を見つけられなかったときは、木の橋を渡って友だちを案内しました。けれども、森の仲間たちがよく注意していたことが一つありました。ボンはすぐに約束をするのに、その約束を実行することを、ときどき忘れてしまうのです。

初夏のある朝、空は青く晴れ、日差しが草の上に金色に広がっていました。ボンが土の盛り上がった場所を飛び越えていると、小川の近くからため息が聞こえてきました。ボンは立ち止まり、シダの葉をかき分けて、小さな石のそばで身を傾けている小さな芽を見つけました。

「どうしたの?」とボンが尋ねました。

小さな芽は、ほんの少しだけ葉を震わせました。

「とても喉が渇いているの。私の根はまだ浅くて、小川まで届かないの。もしあと数日、雨が降らなかったら、大きくなれないかもしれないわ」

ボンは小さな芽を見て、それからすぐそばの小川を見ました。水の流れはかなり遠く、しかも高い土手に隔てられていました。ボンはしばらく考えてから、胸を叩きました。

「心配しないで。今日から毎日、君のところへ水を運んでくるよ。約束する!」

小さな芽はうれしくて、風の中で小さな葉をひらひらと震わせました。

「ありがとう、ボン。私、元気に大きくなるように頑張るね」

次の日、ボンは乾いた果物の皮を一つ持ってきて、小川の水をいっぱいにすくい、小さな芽のところまで慎重に運んで水をやりました。水が茶色い土に染み込むと、小さな芽は顔を上げました。それを見て、ボンはとても喜びました。

「ほらね? ぼくはもう約束を守ったよ!」とボンは言いました。

けれども三日目、ボンは野原を飛んでいく青いチョウを追いかけるのに夢中になってしまいました。花から花へ走り、さらに雲を眺めるために大きな岩にも登りました。太陽が沈みかけたころ、ボンはようやく小川のほとりの小さな芽を思い出しました。

「あっ、忘れてた!」

ボンは急いで水をくみに行きました。けれども帰り道はすでに暗くなり、朝から走り回っていたため、足も疲れていました。ようやく着いたとき、小さな芽は地面に倒れそうなほど、うなだれていました。

「ごめんね」と、息を切らしながらボンは言いました。「今日は約束を忘れてしまったよ」

小さな芽はボンを責めませんでした。ただ、静かに答えました。

「わざとじゃないって分かっているわ。でも、誰かに待たれているとき、一日忘れられるだけでも、その人は悲しくなるし、弱ってしまうの」

ボンはうつむきました。小さな芽の言葉が、胸に重くのしかかりました。これまでボンは、約束を忘れるたびに、ごめんと言いさえすればすべて大丈夫になると思っていました。でも今回は、弱々しい葉がしおれているのを目にして、約束は言葉だけにあるのではないと理解しました。約束とは、誰かが自分に寄せてくれた信頼でもあるのです。

新しい約束の守り方

次の朝、ボンはすぐに遊びに出かけませんでした。大きなハスの葉を一枚見つけ、小さな袋の形に折りたたみ、ハリネズミの子に長い草の茎で結ぶのを手伝ってもらいました。その袋は乾いた果物の皮よりもたくさんの水を入れられましたが、ボンが運ぶには十分軽いものでした。

「これからは、朝に君へ水をやるよ」と、ボンは小さな芽に言いました。「ほかのことをする前に、まずここへ来ることにするね」

それを聞いて、ハリネズミの子が尋ねました。

「もしある日、忙しかったり、足を痛めたりしたらどうするの?」

ボンは黙って考えました。そのとき初めて、約束を守るということは、何もかもを一人でやり続けることではないと気づきました。約束を守るとは、準備をして、よいことが続く方法を見つけることでもあるのです。

「ぼくが来られないときは、友だちに助けを頼んで、そのことをちゃんと伝えるよ」とボンは答えました。「黙ったまま小さな芽を待たせたりはしない」

その日から、ボンは巣穴の入り口に白い小石を一つ置きました。毎朝、目を覚ますとその小石を見て、最初にやるべきことを思い出しました。ハスの葉の袋を持って小川へ行き、水がこぼれないようにとても慎重に歩きました。小さな芽に水をやったあと、根元の周りに乾いた草を何本か置いて、強い日差しを少し和らげてやりました。

森の仲間たちは、ボンが一生懸命世話をしているのを見て、次々に手伝いに来ました。黄色いアヒルは、雨水を受けるための巻き貝の殻を持ってきました。ハリネズミの子は、土の水分を保つ覆いにするため、落ち葉を拾いました。赤いリスは、風が吹いたときに小さな芽が寄りかかれるよう、地面に挿す細い枝を探してきました。

小さな芽は少しずつ元気になりました。最初の二枚の葉に加えて、つやつやした緑色の新しい葉が生えてきました。一週間が過ぎるころには、茎はボンの足ほどの高さになっていました。

「大きくなったね!」とボンは喜びの声を上げました。

「あなたとみんなのおかげよ」と小さな芽は言いました。「でも、あなたが変わったことにも気づいたわ」

「ぼく、どう変わったの?」

「前は、その場でみんなを喜ばせたくて約束していたでしょう。今は、自分に何ができるか、どうすればできるかを考えてから約束しているわ。そのほうが、もっと確かな約束ね」

突然の雨

夏の終わりになると、森にとても日差しの強い日がやってきました。熱い風が木々の枝葉の間を吹き抜け、地面は少しずつ乾いていきました。ボンはそれでも小さな芽に水を運び続けましたが、ハスの葉の袋は、水がすぐに蒸発してしまうため、日に日に軽くなっていきました。

その日の夕方、帰り道を歩いていたボンは、草原から聞こえてくる呼び声を耳にしました。

「ボン、助けて!」

黄色いアヒルでした。乾いた枝が友だちの足に引っかかり、歩けなくなっていたのです。ボンは水の袋を置き、走って枝を外しに行きました。力いっぱい引っ張りましたが、枝には草の根が固く絡みついていました。そこでボンはハリネズミの子と赤いリスを呼びました。三人で力を合わせて押すと、ようやく黄色いアヒルの足を解放することができました。

小川のほとりへ戻ると、ボンはもう空が暗くなっていることに気づきました。いつものように小さな芽へ水を運ぶ時間が、もう残っていませんでした。ボンは心配しながら小さな土地のほうへ走りましたが、途中で最初の雨粒が鼻に落ちてきました。

突然、雨が降り始めたのです。初めはまばらな数滴だけでしたが、やがて雨粒は次第に多くなり、木の葉をぱらぱらと叩きました。乾いていた土は、すぐに柔らかく湿っていきました。小さな芽は葉を空へ向かって持ち上げ、冷たく心地よい雨水を受け止めました。

ボンは葉の屋根の下に立ち、ほっと息をつきました。今日は水をやることができませんでしたが、黄色いアヒルを助けることはできました。大切なのは、ボンが約束を放り出したわけではないということでした。できる日は小さな芽の世話をし、思いがけない出来事が起きたときには友だちに知らせ、一緒に解決する必要があると分かっていたのです。

次の朝、ボンは小さな芽にすべてを話しました。遅くなったことも隠しませんでした。

「昨日は黄色いアヒルを助けなければならなかったから、時間どおりに水をやれなかったんだ。待たせてしまってごめんね。でも、雨が降ってよかったよ」

小さな芽は風の中で葉を揺らしました。

「困っている友だちを助けて、それから私のところへ戻ってきてくれたでしょう。私は悲しくないわ。あなたは正しいことをしたのよ」

小川のほとりの若木

その後の日々、森では小雨がよく降るようになりました。ボンはもう毎日水を運ぶ必要がなくなりましたが、それでも小さな芽の様子を見に行きました。根元の周りに生えた雑草を抜き、土が流されていないかを確かめ、葉に虫食いを見つけると仲間たちに知らせました。

時が過ぎると、小さな芽は元気な若木になりました。幹は高く伸び、枝を広げ、小川のほとりで仲間たちが休めるほどの木陰を作りました。黄色いアヒルはよく木の根元で日向ぼっこをしました。ハリネズミの子は、熟したイチゴを地面から出た根の上に置くのが好きでした。そしてボンは、森の小さな子どもたちに、初めてこの若木に出会った日のことをいつも誇らしげに話しました。

ある朝、若木は小さな白い花を咲かせました。優しい香りが風に乗って広がりました。ボンは花びらを眺めながら言いました。

「前は、君はほんの小さな芽だったね。水を運んでくるだけで十分だと思っていた。でも今は、何かを世話するには、続けることと注意深く見守ること、それに必要なときは誰かに助けを求める力も必要なんだと分かったよ」

若木は枝をそっと揺らしました。

「私は、すてきな約束はとても小さなことから始められると分かったわ。一袋の水、一度の訪問、あるいは心からの一言でも、誰かをもっと強くすることができるのね」

ボンは、日差しの下で輝く小川を見つめました。約束を忘れてしまったときのことを思い出し、恥ずかしくなりました。でも、もうそのことで悲しみ続けたいとは思いませんでした。あの失敗があったからこそ、約束する前に考えること、大切なことを忘れないこと、予定どおりにできないときは正直に伝えることを学べたのです。

それからというもの、森の小さな仲間が「約束する」と言うたびに、ボンは微笑んで尋ねるようになりました。

「その約束を、どうやって実行するか考えた?」

この質問は、約束を重苦しいものにはしませんでした。それどころか、約束とは大切に守るべき贈り物なのだと、みんなが理解する助けになりました。誰かが自分の言葉を信じてくれたとき、その人が待っているのは、耳ざわりのよい言葉ではなく、そのあとに続く心からの努力なのです。

子どもへの教訓

ボンの物語を通して、子どもは、約束する前に自分が本当に実行できるかどうかを考えるべきだと理解できます。約束したなら、忘れずに続けて実行し、待っている人の気持ちにも気を配りましょう。困ったことが起きた場合は、黙ったり忘れたりするのではなく、正直に話し、助けを求め、一緒にふさわしい方法を探すことが大切です。

約束は、とても大きなものである必要はありません。遊んだあとのおもちゃを片づけること、一鉢の植物を世話すること、お父さんやお母さんを手伝うこと、友だちの様子を尋ねることなど、小さな約束を守ることも、信頼を築く方法です。自分の言葉を大切にすることを覚えると、周りの人たちの気持ちも大切にできるようになります。